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「雨水がはぐくむ里山の生き物・人のくらし」

実施団体:ネイチャーヴォイス

1はじめに
  • 参加者に名札とワークシートを渡し,服装や持ち物をチェックします.
  • 状況に応じて,防虫スプレーや携帯用蚊取り線香も配布します.
  • あらかじめグループ分けを行い(1グループ数名以下),活動補助者(活動支援・安全確保を担当)も配置します.
  • あらかじめトイレの場所を確認しておき,事前に(多くの場合,移動途上に)行かせます.
2ガイダンス
 
  • アイスブレイク
     グループごとに,アイスブレイクをかねて,自己紹介をします.
     活動補助者は状況をしっかり観察し,うち解け合いと結束が深まるように働きかけます.たとえば,
    (1)先ず自分自身が,手本となるような自己紹介を行う,(2)探求活動に対する期待や希望,疑問を参加者にたずね,適宜グループ全員で話題を共有する,といった進め方が求められます.
  •  
  • プログラムについて
     プログラムの流れ(それぞれのアクティビティーを実施する時間,場所,内容など)について,概要を説明します.
  •  
  • ワークシート
     参加者に配布するワークシートとしては,(1)活動ルートマップ(図1参照,原図はA3判; 水系や尾根線,家屋の形状が判読可能な縮尺5千分1以上の図版に,探求ルートや観察地点を加筆したものが望ましい),(2)種々のスケール(観察の基準となる物差し)や観察の要点などを表示した用紙(添付のワークシート,原図はA4判)などがある.
  •  
 
 

図1. 活動ルートマップの例.
水系や尾根線,家屋の形状が判読可能な縮尺
5千分1以上の図版を用いることが望ましい

  • 注意事項について
    (安全確保)
     プログラムを踏まえ,参加者に服装・装備の点検と防虫対策を再度依頼します.必要に応じて,観察器具を配布し,その安全で正しい使い方についても説明します.

    (自然保護)
     採集の可否,観察後の原状復帰について説明します.さらに,歩行時の植物等の踏みつけについて,注意を促します.

    (活動マナー)
     私有地・耕作地に対する配慮,自然保護の遵守を確認します.
3「雨水のゆくえ」探求活動

○導入の段階
 1) 仙台市にみられる里山について,地理・歴史・生態の視点から,一般的特性を解説します.

  • 仙台市の衛星写真を提示し,(1)市街地を縁どるように分布する里山の存在と,(2)里山が丘陵 地と結びついて分布している様子を確認します.
  • カラー空中写真や地形図(縮尺1万分の1〜2.5万分の1程度)を提示し,(1)樹枝状の水系や谷津, 高さのそろった尾根といった地形的特徴や,(2)水田や畑地,ため池,スギ植林,コナラ林といった土地利用の実態を確認します.地形図を用いる場合は特に,あらかじめ水系や尾根線,各景観単位を色分けして表示しておく(図2右参照)ことが,参加者の理解を助けるでしょう.
  • 既存資料中の絵図や写真,模式図,あるいは旧版地形図などを提示して, (1)かつて(江戸時代/昭和初期以降)の里山景観や,(2)都心部との物や人(薪炭,農作物,人糞尿,労働力など)の往来といった歴史を紹介し,循環的・自然共生的な生活の存在を紹介します.
  • 既存資料から写真などを引用して,里山のため池や採草地,コナラ林に固有な動植物を紹介します.現在,絶滅が心配されている生物が少なくないことに言及してもよいでしょう.
  2) 活動を繰り広げるフィールド全体の基本構造を解説します.
  • 水源をめざした探求を行うフィールドに視点を移し,「そこには,どんな景観が広がっているの か」想い描くことをねらいとします.
  • フィールド全体(少なくとも,最初に遡上する河川の集水域を包含する範囲)が表示されたカラー空中写真(図2左参照)や地形図(縮尺は 5千分の1 以上)を提示しながら,1)で解説した特性が今回のフィールドにも当てはまるか否か,確認することを促します.
  • 参加者ひとり一人,あるいは各グループが,活動ルートマップ(図1参照)を用いて,遡上予定の河川を確認するとともに,分岐を繰り返す小川や谷奥のため池など,「雨水のゆくえ」に直接関与する水系を着色します.できれば,人家や水田,畑地といった景観単位も色分けして示します.状況に応じて,活動補助者が支援します.
  • あらかじめ水系や尾根線,そして水田や畑地,ため池,スギ植林,コナラ林といった景観単位を色分けして表示した地形図(図2右参照)を提示するなどして,(1)里山が位置する丘陵地は,U字型の集水域の集合体であることや,(2)地形(谷底−斜面−尾根,あるいは下流−上流といった環境傾度)に応じた土地利用がなされていることを解説します.
  3) 活動に対する意欲を高めます.
  • ルートをたどることで,里山を構成するさまざまな景観や生き物,自然や農業,暮らしに関して豊富な知恵を持った農家の方に出会えそうな予感を与えます.

図2.
仙台市近郊に位置するD地区の空中写真(左)と地形図(右). 空中写真(原図はカラー)は, 1993年10月23日に国土地理院が撮影. 色や模様の違いからコナラ林やスギ植林, 水田, 畑地, ため池,住居などの景観単位を読み取ることができる. 地形図には, 尾根(原図では赤色)と水系, ため池(原図では青色)を上書きした. 太い尾根線で区切られるU字型の集水域(谷津)を里山の構造単位とみなすことができる.

○探求の段階
 1) 大きな流れを遡ります.

  • フィールド全体から流れ出る水の多さ,そして土砂や石礫を運搬し,岩盤を浸食する水の力が実感できるように,声がけします.また,状況をみて,魚類や昆虫,植物の観察も促します.
  • 樹木に覆われたトンネル様の河床,あるいは前方の状況が予想できない蛇行した河道 ・・・・・ そうした河川を遡る活動は,意外性やスリルがあって,探求の最初のアクティビティーとして,大変効果的です.ただし,活動日を含めて事前調査をしっかり行い,事故の防止に万全を期す必要があります.
  2) 里山の全体像をつかむために,スケッチを行います.
  • フィールド全体を臨む場所に到達したら,持参した色鉛筆を用いてパノラマをスケッチするよう,参加者に依頼します.
  • その際,大地の凹凸や海抜(地形)に留意しながら,里山景観を構成する水田や畑地,家屋,屋敷林,採草地,スギ植林,コナラ林といった景観単位を抽出し,両者の位置的関係を意識するよう促します(図3).導入の段階で行った解説や活動ルートマップ上での作業を思い起こすことで,スケッチの目的や作業に対する理解が容易になると考えられます.
  • 2・3名の参加者に,描いたスケッチを示しながら,フィールドの特徴をあげていただきます.活動ルートマップを用いた活動で,水平的・概念的に認識されていた里山の全体構造が,スケッチという活動を通して,立体的・視覚的にとらえ直されることになります.
  • 前方に延びる川の流れを目でたどりながら,景観単位のひとつ一つで出会うであろう動植物やその生活環境をしっかり観察し,水源のコナラ林をめざすことを再確認します.

図3.
里山のパノラマ(上)と景観単位が抽出されたスケッチ(下). このアクティビティーにより, 導入段階で提示された里山の全体像が再認識されるとともに, これから里山の核心部で実施される探求活動 に, 指針と期待が与えられる.



  3) あぜ道に沿って小川を遡ります.
  • 小川と水田に挟まれたあぜ道を進みながら,水流や水田,あぜ道,畦畔斜面の管理のしかたや,多様な陸生・水生動植物を観察します.ルーペで詳しく観察したり,写真を撮ったり,ワークシートにスケッチしてもよいでしょう.グループごとに,自由な探求活動を行います.
  • 水田のほかにも,小川近傍の畑地や採草地,果樹園も観察します.その広さや栽培されている野菜・樹木の種類を調べてみましょう ・・・・・ それらが自家用なのか,商品として出荷するのか,見当がつくかもしれません.
  • ほこらや石仏,石碑をみつけたら記録をとり,設置された由来を,最後のアクティビティーの際に,農家の方に質問してみましょう.

 4) ため池を調べます.
  • 小川をたどってため池に到達したら,その大きさや数,配置に注目します.土手には排水堰があるに違いありません.
  • 次に,活動ルートマップを開き,水田や畑地,森林との位置関係を,ほかの谷津の状況を含めて検討してみるよう促します.ため池の総面積とその下流に広がる水田の面積,あるいは上流の集水域の面積との間に,何らかの関係がみつかるかもしれません.人が造ったため池の役割を考えます.
  • 岸辺から湖心に向かって視点を移し,どこに,どんな植物が生育しているのか観察してみましょう.水深に応じて,生育できる植物の形態が異なります(岸辺から順に,低木,抽水植物,浮葉植物,沈水植物が現れます).
  • タモ網で水中や池底をすくい,どんな水生生物がいるか調べます.採集したら透明な容器に入れて,からだのつくりや動きを観察します.きっと,トンボも飛んでいます.観察後は,元通りに戻しましょう.
  • ため池に落ちないように,十分注意します.特に活動補助者は,グループ全員の活動をしっかり掌握します.

 5) 水源の森・コナラ林の構造や歴史を調べます.
  • 遡ってきた水系のもっとも上流に位置するコナラ林に入ると,周囲の様相がこれまでとまったく異なることに気づきます.高さ18mにも達する落葉広葉樹が空を覆い,低木やササ類も認められるかもしれません.薄暗く,やや湿っぽい空気に満たされた森林との出会いです.
  • 小川の水はか細くなり,両岸に急な斜面が迫ってきます.先ず,この小川から分かれ出た小さな流れを追跡し,斜面を登って,水流が谷頭(こくとう; 斜面上部にみられるU字型の浅い凹地)の中に消えていることを確認します.
  • 次に,谷頭内に参加者を導き入れ,降雨の最初の受け皿(源頭部)であることを解説します.見通しのよい森であれば,こうした谷頭とその下端付近から始まる水流の組み合わせが,斜面のあちこちに認められるはずです.
  • 続いて,「空から森の上層に達した雨水は,どのような経路をたどって水流となるのか」問いかけます.きちんとした回答を得るために,(1)上空を仰ぎながら,雨水を受け止める木々の枝張りや葉群の配置を垂直的にスケッチしたり(森林断面図; 図4下),(2)水源涵養の役割を担う土壌について,表面の落葉層から下方の鉱質層に向かって,色やにおい,湿り具合,粒状構造,細根密度などの変化を垂直的にスケッチする(土壌断面図; 図4上)活動を行います.活動補助者の支援やワークシート(添付参照)を利用して,目的と方法をしっかりとらえた上で,探求を進めます.
  • この活動から,(1)コナラ林が2〜5層もの葉層から成り立っていること,(2)最上層(高木層)の木々は,空を埋め尽くすように枝・葉を広げていること,(3)地面の表層には,落ち葉が積み重なった層(落葉層)や多孔質で柔らかいスポンジ状の層があること,(4)分枝を繰り返した根が,最後は糸状の細根がとなって,地表面下をびっしりと覆っていること,などが判明するでしょう ・・・・・ こうした森のつくりが,水源涵養・土砂流出防止機能を生みだしていることを解説します.
  • 土壌断面を観察する時は,斜面下方に腰をおろして穴を掘り,斜面上部側の断面を整えて,観察します.また,柱状に掘り出した土塊は,白色の紙の上に置いて,上層(あるいは下層)から順に観察してゆくとよいでしょう.ピンセットや割り箸で,ていねいに崩してゆきます.落ち葉の分解過程や,さまざまなサイズ,形,色の動物・キノコを観察できるでしょう.
  • コナラ林は,里山の中で,特別な意味をもった景観単位です.この森は,水だけにとどまらず,薪炭や腐葉土(肥料),家屋・農器具の材料といった生活必需品を永続的に生産するとともに,たくさんの動植物のすみかとなってきました.こうした視点から,長い間にわたって人の暮らしを支えてきたコナラ林の歴史も検証します.
  • 先ず,高木となった木々のサイズ(高さや幹直径)が比較的均一であることや,一つの根元から複数の幹が伸び出していること(萌芽)に注意を促します.その原因として,幾世代にもわたって実施されてきた薪炭林としての施業をあげ,その内容・手順を簡単に解説します(最後のアクティビティーでうかがう農家の方のお話しと,重複しないよう配慮します).
  • 薪炭林施業の証拠として,炭焼き窯跡の小さな窪地を観察します.
  図4. コナラ林の森林断面図(下)と土壌断面図(上). 観察結果を例示したワークシートを示す.


 6) 農家を訪ね,里山の伝統的な暮らしについてうかがいます.  
  • 訪問する農家を紹介し,訪問の目的を説明します.加えて,ご迷惑をおかけしないように,注意を促します.参加者の人数が多い場合は,グループごとに活動するよう,活動補助者が特に気をつけます.
  • 代々その土地で生活を営んでこられた農家を訪問し,伝統的な水の利活用や自然と調和した暮らしの実態(食料や燃料,道具などの自給自足と循環的消費)について,お話をうかがいます.具体的には,背戸山(母屋の背後に位置し,日常生活と関わりの深い小山)から湧き出す水の利用,背戸山の樹林の管理,竹林や屋敷林の役割,自家製の道具類,栽培されている山菜や薬草の利用,牛や馬の役割,ため池の水管理,製炭作業,四季それぞれの農作業や行事,野生動植物との触れ合いといった話題が考えられます.
  • 話題に関係する場所や実物,資料を拝見しながらお話しをうかがえるように,また,参加者の探求活動と結びついた話題となるように,事前に十分な打ち合わせを行うことが大切です.
  • 一連の活動をふりかえりながら,水や自然と共生する生活について質疑応答,意見交換を行う時間を設定します.
4まとめ
  • グループごとに,スケッチやメモ,デジタル写真(液晶画像)といった形式で収集されたデータを持ち寄り,遡った水系に沿って整理した上で,発表します.もし時間と場所が確保できれば,観察結果を模造紙に記述し(簡単な探検マップやかわら版を作成),発表に用いるといった活動を取り入れます.
    その際,一連の活動をふりかえって,(1)樹枝状に分岐する水系と,里山の構造・機能上の単位とみなしうる谷津の存在,(2)変化する水の様態と,そうした環境の違いに対応した多様な野生動植物・農作物の分布,(3)水源の森,そして薪炭林としてのコナラ林でみられた巧妙な構造,(4)伝統的な暮らしにおける水の利活用に目を向くように支援します.
  • 続いて,参加者全員で意見交換を行い,活動の成果を分かち合います.
    その最後に,里山の自然の貴重さ,伝統的な暮らしという自然共生型・資源循環型システムの有用性,そして谷津・里山を出た水流が都市や平野,海を潤してゆくという「水の循環」に触れ,参加者ひとり一人の生活・生命にとっての水の重要性を問いかけながら,環境教育の最終ステップともいえる「保全する行動」を誘発する締めくくりを行います.
  • 活動に対する評価を受けます.あらかじめアンケート用紙を準備しておきます.
5気付きの提供

(探求活動−導入の段階)

  • ビジュアルな資料を用いて,参加者に里山の概況・特徴を把握していただくよう努めます.
  • 今回のプログラムで工夫した点は,(1)「仙台市全域→丘陵地域→活動地区→谷津→景観単位」というように,空間スケールを絞り込んでゆく手法を用いたこと,(2)理解を助けるために,必要最小限の加工を施した資料やワークシートを作成したこと,(3)少人数でグループを編成し,専門知識と土地勘のある活動補助者を配置したことです.

(探求活動−探求の段階)

  • 「大きな流れを遡る」活動は,探求を行うフィールド,およびグループの仲間に対するアイスブレイク機能を兼ね備えたアクティビティーであるといえます.
  • 「構造・機能からみて,里山は谷津の集合体であり,その谷津はさまざまな景観単位(人の営みが創出)の集合体である.水系はそれらを樹枝状に繋いでいる.」という概念をつかむことは,決して容易とはいえません.今回のプログラムでは,導入段階における解説・活動に加えて,「里山の全体像をスケッチする」アクティビティーを設定し,視点を変えながら,繰り返し認識を深めることとしました.
  • 水系の源頭部に広がるコナラ林では,水源涵養・土砂流出防止といった公益機能,薪炭や腐葉土を生み出す生産機能,たくさんの動植物のすみかとしての生物多様性保全機能について,主に垂直的な構造に着目した科学的アクティビティーを設定しました.
  • 農家を訪問し,実態・実物に触れながらお話しをうかがうアクティビティーは,臨場感と意外性,説得力に溢れ,参加者をぐいぐい引きつける活動です.しかし,プライバシーに関わる問題も懸念されますので,実施に際しては時間をかけて,ていねいに準備を進めることが肝要です.参加者に自覚をもっていただくことも大切です.

(まとめ)

  • 一連の活動をふりかえりながら,データや‘想い’を整理した上で,何らかの記録としてとりまとめることが望まれます.ただし,フィールドでこうした活動を実施することは難しいので,別の機会をあらかじめ設定しておく必要があるかもしれません.
  • 水や自然と共生する生活について意見を交換する際には,導入の段階で解説した里山(丘陵地)の地理的位置を引き合いに出しながら,谷津・里山から流れ出た水のゆくえについて言及し,より広範なスケールにおける「水の循環」にも目を向けるようにします.また,参加者ひとり一人が,自分自身の生活・生命と水との関わりについて考え,日常的に水を大切にする行動が実行されるよう促します.
  • 終了にあたって,次の約束をします.
    ・活動のマナーとして,ごみは持ち帰る.
    ・必ず,大人の人といっしょに里山へ行く.


    調査票
    「落ち葉でおおわれた世界」(PDF 54KB)
    「林のようすを書いてみよう!」(PDF 36KB)
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