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「昔のくらし体験プログラム:炭を使って蒸しかまどでご飯を炊こう」

実施団体:仙台いぐね研究会

〜はじめに〜

  「暗くなったら電気をつける」、これは当たり前のことです。しかし「電気がつく」ということは本当に当たり前のことでしょうか。では電気がなかった昔、人々はどのように明かりやエネルギーを得ていたのでしょうか。そこには昔の人々の工夫や知恵、手間など暮らしを支えた「エネルギー」をつくりだす「人の力」、そして自然と寄り添うような生活がありました。現代に暮らす私たちはどうでしょうか?
 このプログラムでは、今の暮らしと昔の暮らしの比較を軸に、私たちの身近な「住」や「食」の視点から現在の生活をもう一度振り返り、昔の暮らしを体験することを通して現代の「エネルギー」について考える機会となることを目指しています。

1企画準備

(1)活動の位置づけ

  小学校での環境教育の授業プログラムの一例としてこれらを提案します。主として「総合的な学習の時間」での学習を考えていますが、理科や社会や家庭科など他教科と関連させて複合的な学習へと発展させることも十分可能です。

(2)実施内容の検討・確認  *学習の流れ*


2プログラムの実施

(1)主なアクティビティの概要

イベント 位置づけ 工夫・留意点
廃油ランプ
作り
「昔の灯り」をつくってみよう ・使い古した食用油を利用
・芯にイグサを使用
炭焼き
「昔のエネルギー」に ・炭の歴史
・炭の特徴
 ※炭焼き体験は時間や人数 の都合上困難な場合が予想される。その際は、パネルを使って炭焼きの行程を学ぶ。
ムシカマドで炊飯 炭を使ってご飯を炊いてみよう ・昔家庭で使われていたムシカマドを利用
・炊飯器との比較(時間や味)


(2)各アクティビティの詳細

  1. 廃油ランプ
    ◆場所
     火を使用することができて、汚れても清掃が可能な学校の教室、または実験室などを使用。
    ◆人数
     〜30人(1クラス程度)
    ◆時間
     基本的に1時間程度。
    ◆準備物
     ・使い古した食用油 ・軍手 ・芯に使うイグサ ・器にする竹 ・カッターナイフ
     ※イグサはお近くのたたみ屋さんに問い合わせ調達するといいでしょう。
    ◆手順
     下準備⇒イグサを10cmほどの長さに切って、水に浸しておきます。
  1. 竹を器になるように切ります。
  2. 水に浸しておいたイグサの表面をカッターナイフで薄くそぎ、中の海綿体を取り出します。これが芯となります。
  3. 1 の器に使い古した油を注ぎ入れ、そこへ(2)のイグサの芯をすべてが油に浸らない程度に一部を残すようにしてたてかけます。小石などを利用すると立てかけやすくなります。
  4. 残しておいた芯に火をつけます。
  1. 炭焼き 
     ◆場所
      地域や近郊の炭窯のある協力者のお宅
      (ここでは泉区根白石の熊谷さんのお宅の炭窯で実践した事例をご紹介します。)
    ※協力を得るのが困難な場合は、学校の教室で炭焼きの工程を写真で紹介したパネルなどを使い代替。パネルの貸し出しも可能です。
     ◆人数
       場所の広さにもよりますが、10〜15人程度が適当と思われます。
     ◆時間
       窯入れから火入れで2〜3時間、約1週間後に窯だし。計2日間必要。
     ◆準備物
       ・軍手 ・防塵マスク ・タオル
     ◆手順

【1回目】
活動に入る前に、講師の方から炭窯・炭焼きについてのお話をしていただきます。

  1. 下に細い木を敷きつめ、その上に炭用の木を窯に立てて並べます。(窯いっぱいに並べきるのに約2〜3時間程度を要す)並べ終わったらふたをし、土をかぶせ密閉します。
  2. 窯の脇から火入れを行います。煙は窯の奥に在る空気孔から排出され、空気が循環する仕組みになっています。
  3. 3〜4時間ほど経つと、空気孔から白い煙があがり始めます。その後三日三晩火を焚き続け、高温で木を焼ききります。

【2回目】 約1週間〜10日間後

  1. 窯のふたをあけ、炭を取り出します。
    (窯の入り口が狭いため一度に大人数での活動は難しくなります。この作業に約2〜3時間程度かかります)

    ※留意事項:
     (1)休憩場所の確保
     (2)トイレの確保

  1. ムシカマドで炊飯 
    ◆場所
     基本的に屋外
    ◆人数
     ムシカマドの数にもよるが、1つのムシカマドに5〜10人くらいが適当と思われます。
    ◆時間
     基本的に2〜3時間程度
    ◆準備物
     ・ムシカマド ・はがま ・軍手 ・炭 ・新聞紙 ・マッチ ・うちわ ・はし ・茶碗 ・米 

    ◆手順
  1. はがまに研いだお米と水をいれ、準備します。
  2. ムシカマドに炭を入れ、火をおこします。
  3. 火がおきたら、はがまをムシカマドにいれ蓋をします。
  4. 15分ほどで、ムシカマドのてっぺんの穴から白い煙がひょろひょろと出てきます。
    そうしたらてっぺ んと下の通気口をとじ密閉します。
  5. 15分ほど蒸らします。


〜各アクティビティをプログラムに活かすために〜

(1)プログラムの事前学習をおこないましょう

  この3つのアクティビティは、昔の暮らし・道具・エネルギーを体験するものです。各アクティビティを単発でおわらせないよう、これらをより効果的に学習させるため事前学習の提案をおこないます。

1.「昔の暮らしと今の暮らしを比べてみよう」
 これはプログラムの一番はじめに行いましょう。

  • 昔と今の家の中の様子を表した絵を提示しどこが違うか考えてみる
  • 地域のお年寄りに昔の暮らしについてのインタビューをする
  • 地域の民俗資料館の見学    
    このような活動などを通じて、昔と今の暮らし方の違いからエネルギー源の違い、エネルギーに対する意識の違いに気付くきっかけを提供します。

2.「現代のエネルギーについて学ぼう」
 ここでは 1. の学習を踏まえて現代のエネルギーに対する意識、どのようにエネルギーを消費しているのかを具体的考えます。そして現代のエネルギーを支える「電気」について学習します。電気はどのようにつくられ、どこから届けられるのかまたどのような問題を抱えているのか調べてみましょう。

例)現代の使い捨て社会を表した図(いぐね研究会作成)⇒


(2)各アクティビティの事前学習

  各アクティビティを行うときに、それぞれの活動の教材についての基礎知識を学びます。以下どのように学習が展開できるのか、いくつか項目を挙げ紹介したいと思います。

  1. 廃油ランプ
    • 昔の照明器具にはどのようなものがあり、またいつの時代に使われていたのか
    • どのような人たちが利用していたのか、またどのように利用されていたのか
    • ろうそくの歴史について
    • どのようなものを燃料(油)として利用していたか  など
  2. 炭焼き
    • 炭焼きはいつごろからおこなわれ始めたのか
    • 炭焼きはどこで、誰がおこなっているのか
    • なぜ炭焼きをおこなうのか(エネルギー生産以外にどんな役割があったか)
    • 昔はどのような場面で炭が使われていたのか
    • 今はどのような場面で炭を使用するか
    • 炭の特性(環境にやさしいなどの視点から)  など
  3. ムシカマドで炊飯
    • ムシカマドはいつ、どこで使われていたのか
    • 現在の炊飯器との違いは
    • ムシカマドの構造   など

補足「ムシカマド」とは・・・

かまど〜ガス炊飯器へと移行する時期に都市部で普及した、炭を使用して炊飯する道具です。
少量の炭で、短時間に効率よく炊くことができるという利点があります。現在もお寿司屋さんで利用されています。

※各学校への貸出は無料です(詳しくは仙台いぐね研究会へご連絡ください)。

(3)参加者のふりかえり、気付きの提供

 Tの廃油ランプでは芯にイグサを使用するということが驚きでした。またイグサが一本より二本のほうがより明るくなります。芯の先に灯る小さな火からは、電気の明かりにはない温かさを感じることができます。
 Uの炭焼き体験は決して楽な作業ではありません。窯のなかで作業するとあっという間にすすだらけになりますし、腰も痛くなります。しかしすすだらけになりながらも仲間と協力して行った取り出しの作業はとても楽しく、仕事のあとのご飯のおいしさは格別でした。これは子どもたちにとって楽しい体験になるのではないかと思います。
 また、楽しい面だけではなく炭をつくるのにどれだけの手間・時間が費やされているかに気が付き、現在の電気を手軽に利用している生活を省みるきっかけになるでしょう。

3主催者のふりかえり・今後への活かし方
 

 とりわけムシカマドは見たこともない目新しい道具でしたので、子どもたちも興味津々にずっとその場を離れずにいました。次第に漂ってくるご飯の甘い香りや立ち上る煙をつぶさに観察しており、子どもたちの鋭い観察眼には驚かされることも多かったです。また、普段の炊飯器との違いにも目を向けてくれる良い機会となりました。
 実際に炭焼き体験は時間や人数の都合上、学校の授業で行うことがなかなか難しいことも考えられます。その場合は炭焼きのすべての工程を体験するのではなく、見学また学校の教室で炭焼きの工程をパネルを使用して学習するなど、部分的に体験することも可能だと思います。教室での学習の際に実物の原木や炭を使うことも有効と思われますし、炭焼きを行っている方にお話を伺うなどの方法も考えられます。一般の方向けに炭焼き教室や見学を行っているところもありますので、機会があったらそのようなところを利用してみるといいと思います。
 今回のプログラム作成にあたって難しいと思ったのは、昔の暮らしを体験することで一体何を学ぶのかということを、しっかりと論理的に伝えることです。昔の暮らしを体験することは確かに私たち学生や子どもたちにとって新鮮で楽しいものです。そういった楽しさというのは学習を進めていくうえで大切になってきます。しかしただ楽しいだけで終わらせては学習したことにはなりません。そのために必要になってくるのが、事前学習や振り返りをすることだと感じました。
 このプログラムは、普段の生活のなかで「エネルギー」を使うとき、ふと体験したことを思い出して「エネルギーを大切に使おう」と感じていただけるような、参加者にとってそのようなきっかけとなっていただければと思います。

※「廃油ランプ」
このプログラムでは「ランプ」と呼んでいますが、電気のなかった時代に使われていた、これと似た仕組みのものに「ひょうそく」と呼ばれるものがあります。「ひょうそく」「油皿」「タンコロ」など、形や名称はさまざまです。単独で使ったり、「燈台」という台に載せたり、覆いをかけて「あんどん」にしたり、使い方も色々でした。


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